「多動力」と「やり抜く力」〜人生を楽しく漕ぎ渡るための力〜
ベストセラーとなっている、ホリエモンこと堀江貴文さんの著書『多動力』。
精力的に多方面で活躍を続ける、堀江さんの考え方を知ることができる本です。章立ても主張もわかりやすく、1時間以内にサクッと読めます。
特に仕事において、日頃は明確に意識せずに不満や不安を抱いているようなテーマについて、堀江さんらしい切れ味ある独自の視点を提供してくれているため、自分自身の働き方や、仕事をより良くしたいと考えている人におすすめです。
「常識」に囚われていた自分に気づける本。
僕自身、最初に手に取った時には勘違いしていたのですが、『多動力』というタイトルや「Just Do It(とにかく動け)」という部分のみで理解すると、"広くて浅いやつ もう Good night" になりそうなので、自戒を込めて書き残すことにしました。
実際、そんな簡単なもんじゃない。
個人的に、この本を読んで再認識したことは 3 つ。
- 多動力は、闇雲に広く浅く手を出すことではない。
- すべては、「ハマる」ことから始まる
- 多動力は、教養という幹があって初めて機能する力
多動力を考えるにあたり、『多動力』と同時期に手に取った、『GRIT -やり抜く力-』という本も参考になったので併せてご紹介。
「多動力」と「やり抜く力」。タイトルだけでは一見、矛盾するようなこの2つの能力は、矛盾するどころか密接に関係していました。
その気づきのプロセスを以下に記載します。
本を読みながら、「守破離から集発理へ」というキーワードが頭に浮かんだので、別の機会に改めて書きたいと思います。
もくじ
「多動力」と「やり抜く力」は、矛盾する?
堀江さんの『多動力』と同時期に翻訳された、アンジェラ・ダックワースさんの『GRIT -やり抜く力 - 』 という本があります。
一見すると、次から次へと新しいことをハシゴする「多動力」と、一つのことを最後まで諦めない「やり抜く力」は矛盾する能力に思えます。
この 2 冊を両方読んで、二人の主張を比較しようと考えたのですが、読み終えて今、この2つの力は密接に関係していることがわかりました。
と、いうより、「やり抜く力」は「多動力」の基礎となる力じゃないかと考えています。
順を追って、2 つの力の関係を見ていきます。
多動力は、闇雲に広く浅く手を出すことではない。
本文中に、「一日10軒以上ハシゴしろ」という表現が出てきます。
たくさんの気になるお店があった場合、多くの人は「今回はこのお店にして、また次の機会あったら他も行こう」と考えがちですが、堀江さんは各お店でおすすめの品だけを食べて次の店に行けば、一晩に 10 軒回ることができる、といいます。
これ、凝り固まった発想を壊すためにやってみてもいいかもしれませんが、何も考えずに真似をしても意味が無いと思います。
恐らく「大切な人と美味しいものを食べて、ゆっくり話をしたい」場合、堀江さんでも「 10軒 回る」ことはしないのではないでしょうか。
しかし、「この街で美味しいと言われているお店を全部回りたい」という目的があったなら、行動が変わってくる。地球の裏側の街で、あと3時間しか滞在できないとしたら、一品ずつ食べて行きたいお店をすべて回ろうとも考える気がします。
この場合は、一晩に 10 軒ハシゴしよう、にも納得感があります。堀江さんは、日頃からそういった感覚で生活しているのかもしれません。
自分自身を振り返ると、学生の時に、とにかくいろんな場に顔を出して、たくさんの人と出会うことに躍起になっていた時期がありました。
しかし、その時の活動の結果、現在までつながっている活動や人脈は、あまりありません。
確かに走り回っていましたが、これは堀江さんのいう「多動力」とは非なるものです。
今、冷静に振り返ると、まずこの行動の明確な目的がない。
学校の外に知り合いがたくさんいる、外の世界を知っている(つもりになる)ことが、価値あるものだと思いこんでいて、毎日、新しい人と出会って、初めてのイベントや会合に顔を出す。そして、「こんな人に会った、こんなことを知った」とインスタントに経験を積んだ気持ちになって、なんとなく満足していました。
それから、「自己満足」でしかなかった。これが、個人的には大きな反省点です。
多動力のいう様々な領域を飛び越えて、新しい価値を生み出すということは、必ず自分以外の誰かと接点を持つことになります。
堀江さんのように、様々な役割・肩書を持ち、それを同時に複数進行させようとするなら、なおさら1人で完結する仕事は少ないでしょう。
「自己満足」ではなく、「他者への貢献」が必要だと思うのです。
例えば、「目的」も「他者への貢献」もない状態で、異業種交流会などに参加して、名刺を配りまくったり、Facebookの友達を増やしても、なんの意味もないでしょう。
後から振り返って、虚しい気持ちになってくると思います。
これでは、多動力のいう「領域の越境」とは言えず、ただのつまみ食いでしかない。
テクノロジーとアートを繋いでいる“現代の魔法使い”こと、落合陽一さんが以下のようなツイートをしていました。
ラボの学生の傾向を見てると,ネタを決めて,浮気せずに続けられるかどうかが一番重要だと思う.成功するのは2タイプ.1.集中力と頭の回転と実装力と統率力があって高速に回せるタイプ.多動だが毎回決着.2.マイペースだが不満を漏らさず淡々とやって成果を出すタイプ.
— 落合陽一/Dr.YoichiOchiai (@ochyai) 2017年8月18日
地力不足の多動は悲惨.
地力不足の多動は悲惨
グサリとくる言葉です。
また、堀江さんも紹介している、元リクルートの藤原さんの「レアカードになる方法」では、まずひとつの領域で、1万時間の経験を積み、「プロ」や「専門家」と呼ばれる100人に一人の人材になる。
その後に、次の領域へと移っていくというプロセスを3度繰り返すことで、1/100×1/100×1/100=1/1,000,000の「レア」な存在になれると説いています。
堀江さんやイーロン・マスクさんは、これが普通の人よりも速いということなんだと思います。
そして、何故速いかといえば、落合さんがいうところの「地力」が強いから。
多動力は、業界を縦に仕切っている壁がないかのように、横に自由に移動する力。
イメージとしては、反復横跳びが近いのかなと思います。
真上にジャンプしたり、一方向に進むのではなく、横方向に高速で移動するには足腰や肚(丹田)の筋力が必要です。
この筋力は一朝一夕では強化できないですが、一方で、身に付ければ身体全体を支える軸となる力になり、前後左右に高速に動いてもブレない地力になる。
すべては、「ハマる」ことから始まる
堀江さんは、「猿のようにハマり、鳩のように飽きよ」とも書かれていますが、まず1つのことに「ハマる」ことが大事で、1つのことをやり切った結果、皮膚感覚レベルで得られた気づきが、別のことを始めた際にも生きてくるのだと思うのです。
まだ「猿のようにハマる」ことをすべきステージにいるのに、ハマるまで集中して1つのコトをやっていない状態で、すぐに「向いていない」とか「おもしろくない」と飽きてしまうと多動力のベースとなる「一つのことをやり抜く力」が身につかないんじゃないでしょうか。
堀江さんの前著『ゼロ』には、「なにもない自分に小さなイチを足していく」というキャッチコピーがついていて、とても共感したのですが、同じ人物が「ハシゴしまくる生き方」を語っているのは、矛盾でも何でもないわけです。
「イチを足していく力」=「やり抜く力」は、「多動力」のベースであり、様々な領域を越境していくための足腰の力なんだと気付かされました。
ただし、今の時代はこの「足腰を鍛えるための練習」を、何年もかけてのんびりやってられない。
これは、と思ったら一気にハマり、短期間で1/100を身につけて、次のことにまたハマるということが必要です。
堀江さんは以前、「寿司屋に下積み修行は不要」というような発言をして物議を呼んでいましたが、実際、1人の師匠について長い時間をかけて一つずつ積み上げていく学習方法は、もう時代にマッチしないと思います。
これについては、長くなりそうなので、また別の機会に書きます。
多動力の基礎となる「幹=教養」を身につけるために必要な「やり抜く力」
知識労働、いや知識と経験を掛け合わせた「知恵」こそが付加価値の源泉となる今の時代に必要なものは「教養」であるということも学びました。
本の中で、堀江さんが逮捕された後、「検察」について海外の事例や歴史的背景を徹底的に調べ尽くして理解した、というエピソードが出てきますが、堀江さんは教育に関しても、戦後の義務教育がどのように成立したのか等も勉強されていて、このような知識が土台にあって、活動の幅を拡げるからこそ、幅広い分野で活躍(貢献)できるのだと思います。
モノゴトの根幹を理解しているからこそ、どんな領域であっても高速に、
あるいは瞬間的にポイントを掴んで全体像を把握することができる。
そして、教養はつまみ食いしているだけでは身につかない。
1つのことを深く理解するために、広く見識を集め、実際に体験し、自分の頭で突き詰めて考えて初めて鍛えられるものだと思います。
書籍『GRIT』には、やり抜く力をスコアリングするテストがありますが、僕のスコアは平均値よりもかなり低いものでした。
つまり、伸びしろがあるってことですw。
落ち着きがないという多動力の才能?は、持って生まれていますので(朝着替えながら、別のことを考えていて、前後逆にシャツを来ていたり、出掛けにふと思いついたことをメモしようとしてスリッパのまま外に出たりする…)、やり抜く力を鍛えて多動力を身につけ、自分が生まれたこの時代を楽しんで生きていきたいと思いました。
堀江さんの『多動力』、おすすめです。
読まれていない方は『ゼロ』も一緒に読むと主張の背景が理解できると思います。
そういえば、何かと話題のキンコン西野さんもおすすめされてました。
この方も、多動力を十二分に発揮されていますよね。
西野さん!朝日新聞に『多動力』の素晴らしい書評ありがとうございました!めちゃ反響あります🤑
— 箕輪厚介 (@minowanowa) 2017年8月13日
堀江さん!西野さんより「堀江さん、肉おごってください」とのことです!笑
『多動力』https://t.co/juzUjHspnk@nishinoakihiro @takapon_jp pic.twitter.com/jqDEpsax2E
まとめ
多動力とやり抜く力。
すごいスピードで変化していく今の時代を生きる僕たちの指針となる能力なんじゃないかと思いました。
折角、この時代に生まれたのだから、人生を全力で楽しみながら漕ぎ渡っていきたい。パワーを貰えました。
まだ、読まれていない方は、ぜひ。
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